出世したければ、なりたい自分になってはいけない
経営の世界では、マーケティングとブランディングの違いがよく議論の対象となる。マーケティングとは、製品やサービスの立ち位置を決定し、それにふさわしい売り方を考えていく一連の施策のことを指している。マーケティングの結果として、各種の宣伝活動も実施されていくのが普通だ。
マーケティングとブランディングは違う
マーケティングというものは「ウチの商品にはこのような特徴がありますよ」と相手に知ってもらう活動であり、あくまで主体は自社にある。顧客はマーケティングの対象者という扱いである。
一方、ブランディングの主体はあくまで顧客ということになる。
「アップルの製品はセンスがいい」というのは、顧客が持つイメージであり、アップルが宣伝するものではない。もちろん企業側は、企業がの望むイメージを持ってもらえるよう、多くの働きかけを行うことになるが、あくまでも決定権は顧客側にあるという点が大事だ。
この点を勘違いしてしまうとブランディングはうまくいかない。ブランド・イメージというのは、顧客側に憧れとしての願望があり、その潜在的な意識に合致するように、製品や企業のイメージを形作っていくことが重要となる。ブランディングで失敗する原因のほとんどは、逆のアプローチを採用してしまうことである。
企業側が勝手に、自社のブランド・イメージを決めつけてしまい、それを広告などで周知徹底させようとしてしまう。顧客の側に潜在的な欲求がないものに対していくら宣伝を行っても、顧客が乗ってこないことは明らかである。
自分ではそう思っていなくてもブランドになっているかもしれない
出世にもブランディングの感覚が求められるが、出世における自己ブランディングについてもまったく同じことが言える。周囲が思っている人物像と自分がなりたい人物像が同じとは限らないからである。
自分ではコミュニケーション能力が高いと思っていて、それを自分ブランドにしようと思ったとしても、社内の人にその意識がなければ、その試みは完全に空回りしてしまう。
逆に、自分では、あまりそうなりたくないと思っていても、相手から見ればそれが得意と認識されていて、うまく演出すれば、自分のブランドになるというケースもある。その場合には、拒絶することなく、相手が求めるイメージを作った方が有利かもしれない。
周囲に対する気遣いが得意と思われている社員がいると仮定しよう。本人は、気を遣うことはあまり楽しいこととは考えていない。しかし、気遣いが得意というのは、周囲が決めることであり、本人の意図はほとんど関係がない。ここが重要なポイントとなる。
本人があまり認識していなくても、周囲がそう認識しているのであれば、それはブランディングにおける大きなチャンスといえる。この人は気遣いが得意だと周囲の人が認識していた場合、適切なタイミングで気遣いができれば、「やっぱりこの人は気遣いのレベルが違う」といって、そのイメージを何倍にも増幅させることができるのだ。
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