出世の基本戦略を考える
企業に経営戦略があるように、出世にも戦略が必要である。だが、戦略という言葉は非常に安易に使われており、その本質的な意味は誤解されがちである。出世できる人というのは、プレゼンテーションで綺麗に図示できるものではないかもしれないが、明確な出世戦略を描いているものだ。
出世できる人は、戦略的な行動様式が身に付いている
戦略というのは、ある目的を実現するための、具体的な方策、あるいは道筋のことを指す。ある製品分野で圧倒的なシェアを持つナンバーワン企業になるという目的があるとする。具体的にそれを実現するためには何をしなければならないのかを示したものが戦略ということになる。
よく、売上高○億円、経常利益○億円という数字を戦略として掲げる経営者がいるが、それは戦略とはいわない。これは単なる数値目標に過ぎない。戦略は、目的を達成するための具体的に道筋のことであり、目標はそのために掲げる当面の到達地点のことである。
戦略という言葉はよく戦術という言葉とも混同される。戦術は、戦略を実施するにあたり、個別のプロジェクトをどう進めるのかについて示したものである。営業担当者の数を増やす、SNSによるマーケティングを強化するといった措置は戦術的なものということになる。
経営的なセンスのある人は、こうしたキーワードを使わなくても、戦略と戦術の違い、目的と目標の違いなどを直感的に理解し、行動に反映させることができる。こうした行動様式が身に付いている人は当然、出世においても有利になる。
最初に行うべきなのは目的の明確化
では出世において戦略とはどう考えればよいのだろうか。先ほど述べたように、戦略というのは、目的を実現するための具体的な方策である。正しい出世戦略を立案するためには、まずはしっかりとした目的を持つことが重要となる。
出世において具体的な目的を定めている人は実は少ない。多くの人が何となく出世したいと考えているが、どこまで出世して、何をしたいのか、具体的にイメージできている人は少数派ではないだろうか。
同じ出世といっても、トップに立つ、あるいは役員に昇進することで会社全体の舵取りをしたいと考えるのと、とりあえず管理職になれればよいとだけ考えるのとでは、大きな違いがある。
重要なのは、どのくらいの時期に、どのような立場になりたいのか、そしてその立場になって何をしたいのか、出世における目的を定めることである。この目的がはっきりしないと、それを実現するためのシナリオを描くことは難しい。はっきりとした目的を持つことで、はじめて戦略を描くという作業をスタートさせることができる。
戦略を立案する作業の第一歩は、目的に到達するまでのシナリオをいくつか描いてみることである。描いたシナリオに沿ってシミュレーションを行い、どの程度、実現可能なのか検証していく。
描いたシナリオは状況の変化にともなって絶えず見直しが必要となる。戦略的な出世というのは、この作業を常に、頭の中で継続するということを意味しているのだ。
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