人を機能として理解する能力
出世できる人が持っている能力のひとつに「人を機能として理解する」というものがある。出世できる人は、他人とのコミュニケーション能力が高いケースが多いのだが、それは他人に対して共感することができるのではなく、むしろ他人を機械のように冷徹に見る能力が優れているという話である。
人間はロボットと同じ?
中堅メーカーに勤務するエンジニアのEさんは、基本的に人を機能として認識している。
Eさんは10人ほどの部下を持つチームリーダなのだが、確かに部下に対するEさんの理解は的確である。
例えば部下の中でもっとも若いHさんについては「彼は指示した範囲のことは的確に実行する人物。だたし応用は効かない」、中堅どころのCさんについては「感性でしか理解しないタイプ。情に訴えると動く」といった具合だ。
Cさんがなぜ感性中心にものごとを理解するのか、あるいは今後どのようにしたら理性的な面を強くできるか、といった点にはまったく興味がない。Hさんについても、なぜ指示した範囲のことにとどまっているのか「まったく理解できない」のだという。
Eさんはすべてのことについて割り切って考えている。Eさんの他人に対する理解はどのような行動を取る人なのかという一点に絞られている。相手の行動のパターンの背景にある感情や、それに対するEさん自身の感情も、あえて無視しているのだ。
基本的に相手の行動パターンに従ってコミュニケーションを取るので、仕事のやり取りはうまくいく。相手がどんな人物かを研究し、それに対する感情はあえて持ち出さないのでトラブルにもなりにくい。冷徹すぎて面白みに欠ける人間なのだが、職場では非常に有効に作用している。今のところ出世も順調だ。
Eさんにとっては、ジョークを言うと会話がスムーズに進む人、個人的な雑談を好む人、といった情報もインプットされており、個人的な雑談が好きな人には、適度な頻度で雑談を持ちかけるので、堅物な人物とはまったく思われていない。
価値観がバラバラな人をまとめる能力
このようなEさんに対しては賛否両論があるだろう。筆者も正直あまり好きにはなれない。
だが考えみれば、職場とは仕事をしに来るところであり、遊びに来るところではない。どんな人物であれ、仕事をスムーズに進められる人が「立派な人」であるというのも事実だ。
Eさんのような人は今後、さらに企業社会で必要とされてくるだろう。それは会社がグローバル化してくるからだ。グローバル化とは単純に外国人がやってくるという意味ではない。人種や宗教、性別、価値観などがバラバラな人が集まって仕事をすることになるという意味でグローバル化という言葉を使っている。
言語はもちろんのこと、同じ言語を話していても、文化的背景や人種が異なると、考え方は実に様々なものになる。これからの会社には、このような多種多様な人をチームとしてまとめ、成果に結びつける人材が求められる。このような状況においては、Eさんのように割り切った上で相手を機能として捉える能力が大きな威力を発揮するのだ。
日本人はこの手の対応が苦手である。
英語の問題は英語の問題にあらず
あるシステム会社の技術者が面白いことを言っている。
外国(非英語圏)の人は英語版しかないシステムを導入しても、すぐに慣れて問題なく動作させることができるという(利用者のほとんどは英語をしゃべれない)。
だが日本人(優秀な大学を出て英語を読めるはずの人も含めて)は、英語のシステムを見せると「思考停止してしまってまったく動かせなくなる」のだという。
英語ができず、義務教育もちゃんと修了したのか分からないアジアの人がサクサクと英語のシステムを操作している傍らで、大学出の日本人がオロオロしている姿を想像すると滑稽どころか悲しくなってしまう。
日本人は英語が苦手とされてきたが、おそらくそれは語学力ではなく、異なる文化や価値観の人に対してどのように接してよいのか分からないところに問題の本質がありそうだ。
すでに米国では、同性愛者の人が多数存在していることを前提にしないと人材の確保が難しい状況になっているという。価値観が異なっている人同士では、いわゆる「あうん」の呼吸はまったく成立しないのである。
Eさんの能力は今後の企業社会では、出世のための必須要件になっていくかもしれない。
【参考記事】
「コミュニケーションを取らない人は出世できない」
【関連サイト】
「お金持ちへの取材で明らかになった、お金持ちになるための法則」
「投資で成功するために絶対知っておくべきこと」
「起業・独立で成功するために知っておくべきこと」
「放射能から身を守る食品サイト」
「記事にできないホンネを集めた脱力系裏ニュースサイト」
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